「越南苑」苑長に就任して
石田 央
この度9月1日より越南苑の苑長を引き受ける事となりました。前苑長大貫医師が一身上の都合で退職されての止むを得ない出来事でありました。あまりにも突然のことで困惑していると云うのが現状であります。
私の人生設計では2年前病院医師を退き(ここまでは予定どおり)、短期間「介護老人保健施設:越南苑」(以後越南苑)のお手伝い(将来自分自身もお世話になるのも想定して)をした後、自身年齢も重ねてまいりましたので引退し、残りの人生は自由気ままに生きる予定でありました。人生とはまことに思いどおりには行かないものでございます。引退の折にはGHQのマッカーサー元帥の引退時の言葉をまねて「老兵は死なずただ消え去るのみ」などと挨拶しようと思ってさえいたのであります。
しかしながら越南苑にて医療を担当してみるとまことに奥が深く一筋縄には行かない事ばかりですが、それ故に未知への探検のように探求心(老年医学への挑戦と言わせて下さい)さえ沸くのです。
現在の日本の繁栄を築いてきた人々、私共の現在を生きる礎を作ってくださった方々、「越南苑利用者様」への加療であります。
いわばピカソやゴッホの名画の修復にも似ているのです。この名画の修復にはその個性に合った微妙な絵の具の調合が必要であり、繊細さが要求されます。この名画の修復にあたってはその名画に苦痛を与えてはならない。修復が名画の意志に反したものであってはならない。この名画は尊厳に満ちており仮にも粗相があってはならない。この考えの基、私はしばらくの間ここに留まり、全力を尽くしたいと思うのであります。
幸い五日町病院名誉院長斎藤道男先生にもご助力戴けることになり本当に感謝しております。どうぞ宜しくお願い致します。